教職員の皆様、新年あけましておめでとうございます。
”ゆとりの中で生きる力を!”を合い言葉に幕を開けた教育界も、揺れ動く改革の余波の中で新たな年を迎えました。教育改革の真価が問われると言われた平成14年も、皆様方の力強い取り組みにより、各校園で多くの実績が生まれました。心からお礼申し上げます。
さて、教育を取り巻く社会は、時に改革を上回るスピードで急速に変化しています。今ほど、各学校園が自主性・自立性を確立し、教育に対する確固たる信念と子どもたちに対する熱い願いに裏打ちされた取り組みを、失敗を恐れず実行しなければならない時期はないのではないかと言えます。
もとより、教育とは、一人一人の子どもの自己形成を支援し、豊かな人生を切り拓いていくことのできる力をはぐくむことを目的にした営みであり、一人一人の子どもが、文化と伝統の好ましい側面を継承すると共に、新たな文化と伝統を創造し、豊かな社会の展開に参加していくことを支援する営みです。そのためには、学校園教育を未来と社会に開き、一人一人の子どもに、未来への希望を持たせなくてはなりません。
「教育は未来への先行投資である」と言う言葉がございますが、皆様方には、次代に継承すべき価値あるものと時代の変化とともに変えるべきものを見極めていただき、教育改革の重要性と緊急性を真摯に感じ取りいただきながら、子どもたちにとって充実した、信頼される公教育を着実に築き上げていただきますようお願いいたします。
今、多くの課題が山積しているわけですが、新年にあたり、皆様には、是非、次の2つの不易な課題に全力を注いでいただきたいと考えております。
まず第1は、言うまでもなく、子どもたちに「確かな学力」を付けていただきたいことです。
高度情報化・国際化の一層の進展が予測される21世紀は、知識や情報が社会を動かす原動力となり、「知識競争社会」化が一層進行すると言えます。こうした社会を生き抜く子どもたちに対して、義務教育の段階においては、「基礎基本となる力」をしっかりと身に付けさせることが何よりも大切であると言えます。
学力というものは、単に知識や技能を習得すると言うだけではございません。「学びからの逃避」、「知離れ」という現状において、知識や技能をベースに、考えたり判断する力、学び続けていく意欲や態度を養っていくことも欠かせられないことです。
今期の教育改革は、教えると言うことについて、何かそれが強制、しりごみであり、いささかいけないと言う風潮に対しての原点回帰としての意味合いが濃いように感じられます。しかし、教えるべきことはきっちりと教え込まなければなりません。常に、目の前の子どもたちの現実から出発し、今、何が一番必要なのかを見定め、一人ひとりの理解や習熟の程度等に応じたきめ細かな取り組みを一層すすめていただきたいと思います。
日本の国語教育のパイオニアであり、74歳まで現役の教師として50年以上教壇に立たれた大村はまさんの有名な著書「教えるということ」の一節に、『教師なら教えるのが職業でしょう。分からない子を分かるようにさせる、そのためのプロが教師なのです。“教える”という職責をしっかり果たさなければなりません。』という文言があります。この不易な言葉を、今一度胸に刻んでいただきたいと思います。
もう1点は、学校園全体を、人間教育の場にふさわしい風土に築き上げていただきたいと言うことです。
不登校が、依然、喫緊の教育課題としてのしかかっているわけですが、学校園が、教室が、また、教職員が、級友が、一人ひとりの子どもにとって「心の居場所」となることは、何にもまして優先されるべき課題と言えます。たった一人といえども置き去りにすることは出来ません。未来をつくる子どもたちと共に生きる特権を与えられた一人の教育者として、子どもとの尊い出逢いを大切に、共に悩み、共に希望を語り、すべての子どもにとって、自分らしさの発露となる、いきいきと学べる居場所を保障することに全力を傾けてほしいと思います。
様々な教育課題解決のマスターキーを握るのは、日々子どもと共に生きる皆様お一人お1人です。特にこの時期、個人技に終始したり、価値観や取組のベクトルが一様でなければ、期待される教育効果に限りがございます。小手先だけではなく、知恵を結集し、組織としての方向性を確立することは何にもまして重要と言えます。未来を託す子どもたちに対して、共に手を携え、悔いのない取組に邁進されることを心から願い、年始の挨拶といたします。
平成15年元旦 河内長野市教育委員会 教育長 福田 弘行